荒野へ/
春日線香
浴衣を着て歩いていたのだ
電柱を何本かやり過ごして
花も歌もないままに通っていくと
いたるところに空き地がひらけ
荒地野菊の群生や
廃屋を匿している竹藪が現れ
わけもなくただただ悲しいだけ
しとしとと降り始めた雨に
体はぐっしょりと濡れて
人間の言葉など
もうにんげんのことばなど
かんがえるひまさえないのだった
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