母の反抗/しょだまさし
思えば私も今のあなたと同じ反抗期だったのね私もその「生んでくれなんて頼んでない」なんてお決まりの文句を母にそうあなたの祖母に投げつけた事があったわ母は泣きながら台所で料理を再開してた父に座れと促されて私を諦めて母体を生かすという婦人科医に母が自分の命は要らないからと懇願した顛末をその時初めて聞いたのよあなたは生んでくれと頼んでなんかいないと言うけれどお腹の中で成長する度に蹴ってはあなたは私に教えてくれたのよ生まれて生きることは理屈じゃないって蹴られながら大きくなるお腹に反比例して産み育てることへの不安がどんどん小さくなってね力が漲ってきてスーパーマンより強くなった気がしたものよ母が医師に反抗した気持ちがよくわかったの私やあなたの反抗期のエネルギーとは別物なのよ母親が我が命に代えても子を産むという決意はね男にはない女の勇気なのよあなたもいつかわかる日が来るから苦しくても不安でもただ生きていってねあなたは私にそんな勇気の粒をくれた娘(こ)なんだから
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