夜の忘備録/ただのみきや
ものごとの境に 時の歯車
夜が落としていった
大きなクワガタムシ
濡れたアスファルトから拾い上げ
人を刺す指を挟める
ギリギリと黒い大顎が食い込んで
滲んだ血を 雨が薄めた
意識は濃い墨汁で
ひと筆で描いたオベリスクを空に向かって振りかざすが
次の瞬間 水に戻り
したたか打ち据えられながら
流れにただ流される
あらゆる選択肢の果てにある
たった一つの暗渠へ
夜には見えなくても
朝にはよく見える
年老いた娼婦の裸
朝にはモラルが生き生きと
殺戮を始めていた
《夜の忘備録:2018年6月27日》
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