ムーランルージュのふたり/そらの珊瑚
 
ジャン、人形が男の邪魔ばかりするのは彼の事が好きだから?」
「どうかな」
 お芝居の脚本はジャンが書いていた。
「そうだとして、いつか人形の恋が成就する日は来るの?」
「さあ。でもそうなったらボクらは解散しなくちゃならないよ。お話はジ・エンド。観客は他人の不幸を笑いたいんだ。他人の不幸は極上のラム酒の味。幸せになった二人なんか誰も見に来ないよ」
「そうね、それじゃ困るわね。でもね、時々想像するの。恋が実ったら人形はどんな顔をするんだろうって」
「キミはどう思う?」
「もちろん笑うわ。今まで人形だったから笑った事なんか一度もなかったけど。笑うのよ。そして人間の女に戻るの」
 そうなっ
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