ムーランルージュのふたり/そらの珊瑚
 
をすくめた。
 マリアは心の中でほくそえんだ。もちろん表情には出さない。お芝居の人形と同じように。
「ふうん。そうなの」彼女はいかにも無関心を装う。
 人形が男の恋を邪魔したように、毎回マリアもジャンの恋を邪魔した。ジャンの彼女に多額のお金を渡し別れるようにせまるのだ。今までの彼女の誰もが、恋と金を天秤にかけ、ジャンの元を去っていった。
 だけど世の中、ろくでもない女ばかりではないだろう。いつか金より恋を取る、そんな女が現れるかもしれない。
 そしてジャンは幸せを手に入れる。
 その日が来るのが怖い。ジャンの事が好きだから? そうかもしれないし、ただの独占欲かもしれない。
「ねえジャ
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