きみが傘持ってかなくていいよっていうから/カマキリ
ぼくは人生で何度目かの後悔をする
もう二度と人間なんて信用するもんかと
頭を垂れて天気を確認する人たちの群れを
他にどうしようもなくてただ眺めていた
ふときみのお気に入りの水筒のことを思い出す
銀色で無骨でなんの可愛げもないやつだ
中に入っているのはいつだって
少しぬるめの紅茶だった
いつか白い服を着たきみが
コップをぼくに渡そうとして大惨事になった
大きなシミをつけたきみは
いっそ雨が降ればいいのにってぼやぼやと笑った
その結果がめぐりめぐってこれかどうかは
わかりもしないけれど
とにかくぼくは赤いレンガに足を突き刺したように
この場から動くことができないんだ
そうこうしていると
きみがお気に入りの傘で
手にはもう一本、ビニール傘を携えて
得意げな顔でやってくるのが見えた気がする
きみが傘持ってかなくていいよっていうから
でもあなたは天気予報を見なかったでしょ
ああ、そうか
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