きみはなにに殺されたんだろう/田中修子
 
々しさ。

けれど、この日を迎えて、このようにひきつる指でもちゃんと動くこと。
ひたすら息をしてきて、枯れていく花を見て、死んだ鳥を、そうしてずうっと私の上には空があった。ほんとうに限界のときには海を見にいって、そうしてなにもかも思い直した。
いま、花の蕾や満開の様子を喜んでみられて、鳥のうれしそうな囀りや羽ばたく音を耳にできる。
毎日ほどほどに家事をできて、詩を書いたり縫物をしたり趣味のことさえできるようになって、食事がうまくて、やはり、うまくは言えないが、すごいことだと思う。

だれかに、「あなたは幸運だったのよ」と軽々しく言われたくない。だれかに「こんなに悲惨な子もいるのよ。あなた恵まれてるでしょ」と言いたくもない。
「救いを」「鬱なんて生きてたらなんとかなる」「弱者や貧困層にスポットライトをあてて」なぜだか分からない、ほんとうに吐いてしまいそうになる。

それでも、私にできることはないか? なにを通してできるんだ?

思い出した、君の誕生日はバレンタインデーだった。

ひたすらに、きみの空白が残るだけ。私はそれを書くだけ。
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