黒い雨/こたきひろし
 
可笑しくて笑ったんじゃない
悲しくて笑ったんだ

悲しくて泣いたんじゃない
さびしくて泣いたんだよ

心に出来た腫瘍は染みみたいに広がって
もはや治癒を見込めないだろう

火種は湿気てしまい
病んでしまい
少しも燃え出さない心は
冷たい風を孕んだ荒れ野
夜がとばりを落とせば黒い雨が降りだすだろう
まるでコールタールのような雨が

しるべのない道を
真っ直ぐにあるいてきたつもりだった
のに
ねじれた心は曲がりくねって
しまった

可笑しくて笑ったんじゃない
悲しくて笑ったんだ

悲しくて泣いたんじゃない
さびしくて泣いたんだよ
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