時代/こたきひろし
 
れて
そうなんだ、と女は声を沈ませる
でも、それから間もなく気を取り直して女は男の耳元に口を寄せた
そしてそっと囁いた
「ゆうべはとてもよかったよ。あなたはどうだった?」
それは昨夜の男と女の営みへの感想だった
「もちろん僕もだよ」
男は空かさず答えた

もとは他人の男と女を強く結びつけたのはセックスだった
ひとつ屋根の下に棲んでいればそれが自然だっだよ

時間は流れて止まらない
男と女の激しい性と愛は、気づけば生殖の為にあった
二人の間に子供が生まれ子供が育つと
父親と母親はいつの間にか男と女を忘れてしまった

時間は流れて止まらない
それを塞き止めて上流へと戻れはしないという現実
とは闘えないんだな
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