永遠の雨/田中修子
 
つて
 愛情を泣き叫び希う
 子らであったことを
 ぼくに あのひとらに
 おもいださせておくれ

雨よ、ふれ

六月の雨、紫陽花の葉の、緑けむる
淡い水の器がしずかに みたされてゆく
あふれだす色の洪水で
ぼくの
母の父の
クラスメイトの
科学者の独裁者の兵士の
胸に焼け残っている
優しいものだけ
にぶくかがやく砂金のように
とりだしておくれ

 絵本を破ることのできるちからづよい
 手をくるめば
 ぼくは
 いまここで、永遠に
 だきしめられた

きみもまた永遠を
かならず
与えたひとであったのだ
戻る   Point(15)