永遠の雨/田中修子
 
いつくしみを
ぼくに いつくしむこころを

ひとの知の火がなげこまれた
焼け野が原にも
ひとの予期よりうんとはやく
みどりが咲いたことを

 アインシュタインはおどけながら呻いている
 かれのうつくしい数式のゆくすえを

あなたがたの視線はいつも
ぼくらをすり抜け
よその とおくの つぎの

 ちいさなヒトラーが泣いている
 打擲されてうずくまっているあわれな子

ここにいる ここにいるのだよ
ぼくは そうして きみは

母の父の
わらうクラスメイトらの
まるで 業火のような
そしてこのようなひ ぼくのことばもまた

 あのひとびともまた かつて
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