終末/本田憲嵩
ラルのスピーカーの懐かしいフレーズ、祇園精舎の鐘の音のような近所のお寺の鐘の音、そして電線に集結しているカラスたちの焔のようにけたたましく赤い鳴き声、それらの音が一斉にあべこべに混ざり合う。不協和音で構成されたきわめて短いひとつの曲を奏でる。西窓から射し込んでくる赤い光に照らされている、子供のように老いた母、老木のように老いた父、そして老いの戸口に立たされた僕、三人で丸いちゃぶ台で食卓を囲む。「いただきます」まるで世界の終末の最後の光景、そのもののように。(西窓から外界は、落ちてきた太陽によって、真っ赤に燃えている、燃えている、)。
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