終末/本田憲嵩
 
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死の匂う、音を聞く。だいぶ疲れているのだろうか。考える人のようにソファーに座り込んで、夕方に近い、昼下がりのつよい陽射しに少しうつむく。それは沈んでいる、僕の罪悪そのもの。不意に、朽ちた老木が倒れ込む寸前のような、あるいはそれは、一家の没落への道に吹き付ける、ひとひらの風として、そのまま直結しているかのような、父の深いため息。

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(この古ぼけた駅はまるでオレそのものだ。かつてこの市(まち)の炭鉱から採れた石炭は、もはやとっくの昔に時代遅れのものとなり、それさえも底を尽きてしまった。目の前にひろがる北の大通りの店さきどもは、生ぐさい潮風で錆びついたシャッタ
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