祖国について/青色銀河団
 
封筒のいのちが燃やされた朝
高い樹木は舌のかたちに風に揺れ
戦争に行ったままおとうさんは
還ってきませんでした

硬いあおぞらで何かが倒れます
夢の森はいまでも神聖なままですが
月だけが裏返っていました

窓に向ってノートをひらくと
祖国のなにかが問い始めます
悲しい手品師になった先生は
天文の法則に捕らわれてしまいました

しるしの言葉が
どこにもありません
ページの感触ばかりが
つのってゆきます


(遠くの野原で電話がりんりん鳴りひびく)
(弾丸の足音を埃のような戦車が踏み潰す)

せつない年月のひびきについて
耳を傾けまどろみはじめる季節なの
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