ホトトギスの木/ただのみきや
 
仲間もなく
暑さに唸る蝉ばかり
ホトトギスの言葉は解らなかったが
木には それが
声のない自分の心の声に思えた
日の光も届かない懐の奥深くから
悲しく 苦しげで どこか陽気で
訴えるような節がある
自分が歌っているのだと思った


鳴かねば殺すと言うのなら
鳴いてもいつかは殺される
不愉快だからと我慢がならぬと
被害者面して殺すのか

鳴かせてみせると言う者は
鳴きたくなくても鳴かすのか
騙して脅してお世辞を言って
拷問してでも鳴かすのか

鳴くまで待つという者は
鳴いたら最後やって来て
自分の手柄と言うだろか
自分のものだと言うだろうか

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