いかなる理由があろうと/狸亭
 
いかなる理由があろうと、
人間による人間の殺戮を正当化するわけにはいかない。
そこから発語する、
そこからしか、詩は生まれない。

気の遠くなるような、
辛い、とても辛いことであっても
たちのぼる砂塵の中によこたわる民衆の
血塗れの飢えから目をそらすな、

黒々と流れひろがる重油は
ゆっくりとアラビアの海を犯す。
全身を油塗れに呪縛された海鵜は
雲ひとつない青空をみあげるのだが、

そこには冷たい金属片が飛び交うばかりで、
一羽の仲間も見えない。
魚たちは窒息し おびただしい骸となり
恨みの悪臭となって増殖する。

即時停戦。
正義も大義も聖戦も永遠に凍結
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