鳥葬/田中修子
 
悲劇の王のように
からだを広げて倒れているかなしい道化師のわたしの
まるまるとした頬に
塔のある黒い森に通ずる
白い光る道ばたに落ちていた母の口紅で描いた
涙型のところをとくに念入りに
食ってあの
痛いような空へかえしておくれ

すべて声を失った鳥よ 羽ばたきだけがあなたの存在を知らしている

お願いだわたしがまだ娘として
みずからの
口を縫う痛みに
耐えられるうちに

わたしはまだ生きている死体としてこの森に
この空に
そびえ立つ

あなたの嘴に
唇を捧げよう
口を噤もう

さようなら

わたしに殺された

父よ
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