ほろほろほろ、と/秋葉竹
 


菊の花がゆるく風にゆれて、
黄色いほほえみをうかべ
この部屋にちいさな笑い声がうまれる。

ほろほろほろ、と
ちった花びらは
ベッドのよこにそろえられた
黒色のスリッパのなかへ、おちる。

あッ、
っとわたしの声はもれ、
もらしてしまった恥ずかしさに、両眼を瞑る。

ときまさに白くあかるい午(ひる)。

世界はいつにもまして、
ひたむきな努力がひつような真実を
ひた隠しにするが、この
いままさにやさしさがながれる部屋の
悲しみのピアノのねいろを、

色にたとえることはできるのか?


どうでしょう、
それは、どうでもいいんです。

広い窓からみおろす花壇を囲う
赤いレンガにしみこんでゆく雨音が、
とってもやわらかいんです。
と、
ちっておちてゆく菊の花びらに、
きかせてあげたいだけのことだから。





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