架空の街/そらの珊瑚
雨は降りやまない
けれど
雨音は音符に変換されていくから
赤子も子燕もやすらかに眠る
雷は遠く くぐもって鳴り
狙い撃ちされる心配はいらない
流れ星のいくつかは
蛍に生まれ代わり
籠の中で光る
「兄さん、よく光るね」
「ああ、これがいちばんよく光るよ」
兄弟もまた架空の繭の中でヒカル
点滅は
ないということと
あるということが
背中合わせに存在し合い
はかないことの証しになる
ときおり雨は赤い
それは空が傷ついた証し
遊園地の馬を錆色に染める
夜行列車の行き先が明日だと
誰も信じて疑わないのは
なぜなんだろう
操車場に ひらり揚羽蝶
わたしもひとり
汽笛の粒がなくなるまで見送る
※会話部分は小川未明「海ぼたる」からの引用です。
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