傷だらけの。/秋葉竹
 


スタジアムの外に棒立ちして
むかしながらのソウルミュージックを聴く。

風に乗って流れてくる
古びたギターソロの音が、

泣いている。

そういえば
ギターが泣くって、
こういうことでしたね?

ポップコーンをほおばって、
傷だらけの青春に、想いを馳せる。

あのころ未完成な宝物が
目の前にいくつも転がっていたのだが、

そういえば
古びた木製の空箱が
歩いてきた坂道の下に、放り出されて、
無惨な棘を剥き出しにしている。

今夜こころに吹きかう
あたたかく、優しい、ホンキートンクな風は、
ただ、
自由とはなにも持たないことだと、
知らせてくれた風と同じ匂いがする。





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