楽園/尾田和彦
うっすらと浮かんだ額の汗に
太陽と雲が逆さに映りこんだ
霧島から噴煙が上がっている
牛たちは
寝そべったり
エサを食べたり
思い思いに過ごしている
鴉に啄まれた
タヌキの死骸が
草むらから顔を出している
内臓がすっかり無くなり
皮だけになったタヌキ
俺たちは
人生を形容する言葉を探していた
無抵抗なもの
それは人間だ
夏がそこまで来ている
雑草の太い茎
根っこ
土くれが緑色に覆われた
牛舎の熱気
ここは歴史から脱出する場所だ
名もない犬が一呼吸
空気を吸い込む
犬の中に広がった空
雲
地球の丸い形
尖がった山の頂点
全ての形に存在が宿る
未来は原っぱに転がった影だ
俺たちが悔やんだ
過去だ
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