劇 場/塔野夏子
 
た手で
闇の宝石を探り当てていた

いつしかあらわれたコロスたち
計ったように整然と並んで
けれどてんでに違う仮面で
てんでに違う歌をうたう
しかもそこは中空だ

吊された天体たちが
溶け爛れ滴りはじめた
異様な熱い匂いがあたりに満ちてゆく

繋がれた海がもがいている
たとえ解き放たれたところで
還る処など
もうどこにも無いというのに

一面の花園のただなかで
黒いオベリスクが音もなくゆるやかに崩落し
その瓦礫の上で
青ざめた喜劇役者は
陽気に発作している

心細げにただ歩いていた
小さな人物はどこへ消えたか
いまはもう気配すらない

そもそも 幕はどこにある?
上げられるべきなのか
降ろされるべきなのか
舞台監督の笑いがチェシャ猫のように
スープの中に消えたのを見た
と思ったそれも
幻なのか

とにかく この照明はあまりにも明るすぎる



個人サイト「Tower117」掲載

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