下弦の恋/田中修子
 
おしまいだ

かあさんととうさんがお互いを捧げあうダンスをして
わたしがうまれたこと
かあさんは忘れちゃったみたい
こりゃァ ちっとした 奇跡だァってのになァ
困ったもんだァ

夢の中で折れるナイフ

ヴィクトリア時代のあのおはなしがとても好き
殿方が家具のエロティックなおみあしに欲情してしまうから
ピアノにもカヴァーをかけたという

わたしは淡いピンク色のつむじ風になって
ゼウスのごとくありとあらゆるカヴァーを
まくりまくり
ひらひらひらめく布布から
ルルルンルンっとかわいい音階

下弦の月の恋に痩せ細る
悩ましげなため息
戻る   Point(4)