下弦の恋/田中修子
おしまいだ
かあさんととうさんがお互いを捧げあうダンスをして
わたしがうまれたこと
かあさんは忘れちゃったみたい
こりゃァ ちっとした 奇跡だァってのになァ
困ったもんだァ
夢の中で折れるナイフ
ヴィクトリア時代のあのおはなしがとても好き
殿方が家具のエロティックなおみあしに欲情してしまうから
ピアノにもカヴァーをかけたという
わたしは淡いピンク色のつむじ風になって
ゼウスのごとくありとあらゆるカヴァーを
まくりまくり
ひらひらひらめく布布から
ルルルンルンっとかわいい音階
下弦の月の恋に痩せ細る
悩ましげなため息
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