蛇に/こたきひろし
俺は一匹の蛇だった 蛇に産まれる前は一人の人間であったかもしれない
そんな事を思いながら 俺は田んぼと田んぼの間の細い道端の草むらにに潜んでいた
その時福寿さんが歩いてきた 福寿さんは近辺の農夫 妻も子供もいた
俺は一匹のマムシ この辺りではクチハビと呼ばれて恐れられていた
毒蛇だからね 猛毒持っているからさ
それにしても、福寿とはいい名前だな おめでたい名前だ
田んぼには時節柄水が張られ一面稲が植わってたからな
福寿さんはそれを見にきた訳さ 福寿さんが草むらに足を踏み入れた時
俺は胴体を踏まれた
それで
反射的にそして反社会的に俺は福寿さんの足を噛んでしまった
俺は前世は人間だったのかもしれないのに
福寿さんの足を噛んでしまった
全ては手遅れ 猛毒は福寿さんの足から全身に回っていった
それにしても福寿なんて名前 ちっとも福寿じゃ無くなっちまったな
結果論だけど
ね
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