二月からのこと/山人
 
湿潤するのだ
不快な長い季節の到来を
喜々として表現している

こうして、悪は新しい産卵をし
悪の命を生み続ける
不快な空間はあらゆる場面でも
途切れることがなく存在してゆく

十月はあきらめの序曲
乾いた皮膚をわずかに流れるねばい汗
かすかな望みを打ち消す冷たい風音

風景はさらに固まり続けるだろう
思考は気温と共に鬱屈し乾いてゆく
ひとつふたつと声にならない声を発し
ねじを巻くのだ

*

男に足はなかった
有ったのは、たった一つの脳と心臓だけだ
脳と心臓からやがて手が生え、足が伸び
それらが男に足され、人になる
十一月の肌寒い雨の日
男はのっ
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