二月からのこと/山人
 
明けない朝
また目覚めてしまった
玄関をあけ、階段を降りる
道路には闇にたたずんだ外灯がある
何かが舞っている
羽虫のような生き物
排尿をしながらそれを眺めていると
細かい雪だった
外灯の後ろ側には月があるのに
闇はしずかに
月光とともにそこにあった

裸に冷やされた仕事場の戸を開け
電灯をともし ヒーターを点ける
マグカップに白湯を注ぐ
数回 息を吹きかけて
口の中に湯を回す
無味な湯が口中をころがり
私の芯へと落下していく

もうすぐ夜が明けるだろう
失われた時間が次第に元に戻ってくる
でもまだ三月だ

*

闇の西の空に赤みがかった月が浮い
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