桜と白樺/ただのみきや
 
盃から溢れる涙のよう
漲る色香をその身に収め切れず
こぼした花弁 拾って風は 囁くほどの足取りで

月しか知らない子どものよう
蒼白いその身を五月の光に晒しながら
淡く 萌え出る想い そっと手を添え

届けられた 薄紅の文
数えるほどの昼と夜 散り薄れ 消え往くものから
日差しを受け日増しに 濃く 強くなるものへ

風だけが言葉 風だけが囁き
風だけが抱擁だった
樹の間を渡る ひと息の風だけが

解さずに感じ 侵食し合う 願わくば
幸も不幸もひとつのことと ひと息の風と




               《桜と白樺:2018年5月2日》








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