18になる私の回帰的独奏/氷鏡
 
形のない監獄と非指向性の銃弾
逃げた先はモノクロームの図書館
居心地の良い立ち入り禁止区域

天井が無いので雨が降ってきて
本は濡れ言葉が水に溶け出した
図書館は巨大な水槽になった

泳ぎ方を知らなかったので
ただただ深く潜り続けた
気が付けば自分は魚になっていた

日の光は届かなくていい
今は空気も吸いたくない
けれど水槽の壁は割れてしまった
三の倍数が自分を目覚めさせたのだ


そこには、
無限の知識を身にまとう深海魚ではなく、
性別と国籍と言語と無限のレッテルに塗れた僕がいた
無理矢理吸わされた空気は有毒ガスのようで
見るべき現実の世界にはスモッグが満ちていた

やがて、ふらふらと町へ歩き出す


生きた言葉を愛する力を失ったので、僕は翻訳者になった
意味だけが浮かんでいるこの世界を生きるのは難しい
すれ違う人の正しさが心に深い亀裂をつくった

あの場所には二度と戻れまい
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