履歴/ヤスヒロ ハル
も
いつかはその火を聖なるものとして
然るべき者に手渡さなければならない
奥歯を噛むときも
だれかを抱くときも
皿を洗うときも
笑い転げるときも
喪主をつとめるときも
表彰されるときも
電車で席を譲るときも
逆に譲られるときも
浜辺の砂を掬うときも
森林の酸素を胸に染みさせるときも
涙がでないほど泣くときも
怒りで吐くときも
喜びで拳を握るときも
誰かに寄り添うときも
誰かに寄り添われるときも
握手するときも
頬骨を平手で叩かれるときも
愛をささやくときも
噴出する憎しみを許すときも
燃やさなければならない!
蝋を溶かして
絶やしてはならない
世界から手渡された火
そしていつか返す火だ
その熱が
時を進め地球を転がしめ
空を焼き
夕暮れを呼び
わたしやあなたを
ただ炎と言う
詩にするのだ
履歴と言う
血の滲む美しい炎!
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