気もそぞろ、雨の中/坂本瞳子
 
ビニールの傘
雨の滴が伝う

船の帆のように
ピンと張って
緩むことなく
風には向かう

弱くない
ひるまない

ボタボタと
雨に打ち付けられて
音を立てるけれども

破られない
穴が空いて漏れたりしない

透明のビニールは
あちら側を見るために

剥き出しの銀の骨は
脆弱そうに見えても
それなりに強く

守るから
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