各駅停車/ヤスヒロ ハル
 
暖かな陽の光が差しこむ
昼下がりの各駅停車

疎らな乗客
緩やかな進行

部活を終えた女子高校生が
座席でふたり 眠っている


この状況は
とても身近なことの暗喩
ではないだろうか
そんな声が頭をよぎる

わたしは半分眠った頭で
その意味を
思い出そうとするが
記憶に手が届かない

生まれてから死ぬまで
一度は体験するような
やわらかい何か


気が付くと私は
降りるべき駅を乗り過ごし
半覚醒の混乱のうちに
列車を降りた

あんなに傾いて眠っていた
女子高校生たちは
影も形もなかった

やわらかい何かと共に
急行の止まらない駅で
降車したのだろう
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