消える 残る/木立 悟
花の樹に重なり径はつづき
風と暗がりを手招いている
花の色とは異なる光が
わずかにわずかにこぼれつづける
径を飛び 径をくぐり
霧のかたちのむこうを浴び
涙の花 声の花
見るもののない径に迷う花
暗がりをつなぐ鎖
樹のかたちの火
転がる時計を照らす光
土に残る冬の名前
欠けても欠けても補われ得ない
終わらぬ呪いを
終わる呪いに変える日々
辺から辺へわだかまる昼
光から離れた光の術が
花ではない花になるとき
斜めに広いくちびるが
別れの波を伝えはじめる
消えるもの 到かぬもの
触れ得ぬものにのばされる手に
曇は 色は
影は降りしきる
戻る 編 削 Point(1)