消える 残る/木立 悟
 




花の樹に重なり径はつづき
風と暗がりを手招いている
花の色とは異なる光が
わずかにわずかにこぼれつづける


径を飛び 径をくぐり
霧のかたちのむこうを浴び
涙の花 声の花
見るもののない径に迷う花


暗がりをつなぐ鎖
樹のかたちの火
転がる時計を照らす光
土に残る冬の名前


欠けても欠けても補われ得ない
終わらぬ呪いを
終わる呪いに変える日々
辺から辺へわだかまる昼


光から離れた光の術が
花ではない花になるとき
斜めに広いくちびるが
別れの波を伝えはじめる


消えるもの 到かぬもの
触れ得ぬものにのばされる手に
曇は 色は
影は降りしきる























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