死ぬ感じ/ペペロ
ようもなく嫌なことと言えば、父がつくってくれるかんたんな料理は整髪料の味がすることぐらいなものだ。
きのう見たドラマでソ連兵におかされそうになった日本人の女が青酸カリで自殺していた。
そのときオレはハッとして明日死のうと思ったのだ。
あいつがオレを見つめている。話しかけてきそうだ。うっとうしい。青酸カリで自殺した日本人女性もあのとき誰かに話しかけられたら死ななかった、死ねなかったかもしれない。
もうこんなことを思っている時点で話しかけられているようなもんだ。
あの子はいじめが理由だろうか。死のうと思うくらい辛いのだろう。
彼がオレより手前に移動した。タクシー待ちの人間がオレより手前で待っているような状況だ。
オレも移動しようか。大人げないか。
ここじゃあ死ねないか。少年の自殺を見届ける気にはなれない。
ホームから退散するか。きのうの昼からなにも食べていない。なにを食べたんだっけ。牛丼屋の定食に目玉焼きがあったのを思い出した。普通だな。まったく普通だ。普通すぎるな。
少年から死ぬ感じが失せていた。
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