ざぁだ・・・/よーかん
タイルの壁を眺めている。
拙いモザイクで模様が描かれている。
何を象っているのかわからない。
葉脈だろうか。
馬のようにも見える。
神聖なシンボルではないようだ。
もっと古い何かのような気がする。
明かりの下で蓋のない土鍋がグツグツと湯だっている。
木の床の感触が重たい。
丸い革靴を履いている。
窓の外はガラスが曇っていて見えない。
老婆が容器の蓋を開け、黒い粉を二さじコップに移す。
長い柄のオタマで土鍋から、これも二杯、熱湯をコップに注いだ。
「ほれ」
老婆がコップを差し出す。
「ざぁだ・・・ざぁだ・・・」
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