難題/ただのみきや
 
末も決めてしまう

寂し気な人魚の鱗が剥がれ落ちる度に
カリンバのような音色が床に転がった

残雪の中やっと乾いたベンチで揺れる小枝の影
人はただ祝祭に与(あずか)るだけ

気まぐれな太陽の愛撫に早々と
羽化した蝶は寄り添う花もなく
のべ広げた翅の斑紋はまばたきもせずに
奈落のような空を見つめたまま

薄いコートに着替えた女性
まだ少し寒い朝チェス盤を挟んでまた一つ
春の女神が冬の女神の手駒を取る

何もない所でもカラスは何か食べている
見えない何かを見つけてはとりあえず食べてみる

がっかりしたように金糸雀が首をかしげた
鍵盤は白と黒の海 静かにお
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