四月のイリュージョン/長崎螢太
今はただ、ぽっかりと空いたボトルが
海を漂い
手垢のついた時間が、終わりを迎える
真新しい窓を覆う
ひかりは
星の空を、はだかで漂う不確かさで
黒く
塗りつぶした本に、ときを刻みはじめ
嵐が去ったよるに、きみは
ぼくの幻をみている
いくつもの陽炎を
感じて
風浪に曝されながら、靄を通り抜けた
口を閉ざす海
の向こうに、夜中の虹が見える
冬に巣立つ、蜃気楼の海燕
船底での覚醒
ベッドに置いて、なくした似顔絵
砂時計を乾かし、帽子に四月の風が抜けて
冬のインクを滲ませていく
ブルーベリーをかみ砕く
空間に浮遊する
粒子から、いのちがほとばしる
干からびた稲穂に
かぜを通して歩いていく、あの丘の
ほそい糸を辿っていくと
あおい鳥が、足元から羽ばたいていく
ミュトスの前の二つのひとみを
探さないで
オレンジ色のひかりとリズム
小梢のさえずり
ぼくの無音を
セロファンのランプとして表す
たとえ騒めく闇の中でも
きみを見つけよう
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