白く 残る/木立 悟
 



暗闇にさえ晒したことの無かった泣き顔を
いつのまにか磔られた光に照らされていた
片腕を
炎に溶かしながら


人を喰らう鳥が飛び
死にたい者しか外を歩かない
死にたい者だけが集まり
暗闇で歌いつづけている


蜘蛛を呑んだままの滴が
埃の上に降りてくる
赤い酒を透り
別の命となり 歩み去る


平らに塗られた
波の失い川の道
広場より広く
家と家を隔てる道
  
 

白濁の花の樹に
白い鳥がとまり
花をついばんでは気を失い
再び目覚め 再びついばみ
落ちる白 昇る白
落ちる白 昇る白



眠りつづける巨大なものが
約束事のように寝返りをうち
岩のはざまに満ちる雨の板
いつか終わる灯を記しつづける


空を摘まみ上げる指が
暗い側から下ろしてゆく時
午後も夜も 剥がれ混じり
幼い蜥蜴 
幼い蜘蛛の背に降りつもる



















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