何もかも/こたきひろし
 
何もかも嫌になるときの私は鬱に沈んでる
心に立ち込めた暗雲は
覗いた浴室の鏡を曇らせて
疲れた顔はぼやけていた

朝 食欲がわかない
だから
キッチンで紅い林檎を剥いた
けど
白い果肉を切っても
食欲は回復しなかった

暫くの間
手に持ったナイフを見つめていた
そのとき 私の全身を巡る血管には虚無が流れているのを
感じた

ふと 我にかえった
時間が悪戯に過ぎていく
動かなくなってしまった砂時計を
そのままにしておけない

ひっくり返した
ふたたびさらさらと落ちだした砂時計

もしかしたら
人が生きるとは
日々 飽きる事なく
砂時計をひっくり返す事の繰り返し
かも知れなかった

何もかも嫌になるときの私には鬱が立ち込めて

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