暗闇のなかでは/こたきひろし
 
暗闇のなかでは眠れないから
明かりをつけるね ぼんやりでいいから
と彼女は言った

何度目かの逢い引きで二人は一夜を共にした
それが早いかそうでないかに迷いは生まれなかった
お互い成熟した大人だから
一度や二度寝たくらいでその関係に引きずられる事はないだろう

よかったわ
彼女は男の耳元でささやいた
言いながら内心ではそれを否定していなくもなかった
今夜が初めてだから 仕方ない
回を重ねていくうちにはお互いの体が馴染んでいくだろうと思った
物足りないなさを感じながら深追いはしないと思った彼女は
大人の女だったのだろう

私 眠るね
明日は早く起きて朝食作るから楽
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