誤謬/ただのみきや
 
胃袋を焼く
少しずつ焼いて往く
脳を殺す
微細な匙の加減
からっぽの冷蔵庫みたいに
ロックンロールが居なくなると
窓と窓の間に挟まった
蛾の身悶えが
耳のすぐ傍から聞こえて来た
嘘だとわかっても
すがりつく鏡には
海が見える気がして
けむりの額縁
自画像の中の見知らぬ顔
閃光が置き去りにした轟きのように
後ろから追って来て
無垢なものたちを石に変える
やり取りの
味気なさ
もう濡れることもなく
芽吹きに微笑みかけながら
朝はどこかで
鴎のように白い骨をも照らしている
抗い拒む生と
ただ受容する死
たたみ切れない夜の翼が
視界の縁にちらついて

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