雨の日と月曜日は/かんな
 


目を覚ました
しとしとと音がしている
しずかな朝の、
雨音の音階を調律するひとがいる
誰だ。
調律師は物憂げな顔で指先を動かす
ふと音がなめらかに
なったかと思うと
その指先は
一粒のカプセルを胃に流し込んだ


少しだけ調律師の話をしたい
彼は田舎の生まれであったが
いわゆる地主の跡取りというものであった
しかし至って本人にその自覚はなく
好きな趣味を満喫して育ちながら
その延長としてピアノに興味を持ち
次男坊に遺産など譲るという宣言を
そうそうに打ち出すと
調律の勉強のできる学校へと進んだ


世界は雨、
灰色の雲が一面覆い尽くす
憂う
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