出涸らしの慕情/笹子ゆら
あなたの云う、地獄と名のつく場所に連れていってくれと、私がいうのもおかしいので、その方へむかっていく背中を、みていた。煙草の煙にまざって、ゆらゆら幻影、だんだん、見えなくなっていく。私は噛む。爪を、噛む。視界がにじんで、そうやって最後には、なんにも見えなくなって、しまった。
それがあなたのお得意の、戦法だとしったのは、いつだったっけ。気が付かないふり、していたのかも、しれない。
ストレスで、ごまかせなくなった肌、まつ毛の下のくぼみ、そうしたもの。
落ち着かない心臓、指先の震え、そぞろな意識。
取っ払ってくれると信じていたけれど、ほんとうはほら、引き寄せたのが。
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