The other side/佐々宝砂
 
約束した覚えが
そこはかとなく
ある

わたしんちには仏壇があって
歩いてゆけるすぐの距離に先祖代々の墓があって
春彼岸には野ビルが伸び
秋彼岸には彼岸花が咲く
いまは野ビルが伸び放題だけれど
お墓の野ビルなんか誰も食べない

人間は。

不許葷酒入山門
寺の山門をくぐる者は
酒はもちろん
ニンニクもニラもネギも野ビルも
口にしちゃいけない
でも野ビルは好きに伸びる
そこが墓であろうと
寺であろうと
自分が生えたところに

あのひとんちにはきっと仏壇があって
家のそばかわかんないけど先祖代々の墓もあって
春彼岸に何が伸び
秋彼岸に何が咲くか

[次のページ]
戻る   Point(4)