春/
はるな
春、また
海のない街で
想いで腫れた胸のうちはまだ
ことばにならない
ばらが枯れ あじさいが枯れ
百合が枯れ 菊の花が枯れ
それでもまた 蕾がふくらむ
風が行き 雨が落ち
雲の間に夢は暮れ
わたしは
忘れないということだけを
糧のように
贖いのようにして
いまは 生きています
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