あなたが来る/ただのみきや
 
一つの知らせ
一枚の枯葉のように軽く
風の悪戯な囁きのようで

隕石のようにこころ深く
波立たせ沸々と滾らせる
一つの知らせ


冷たい火夢を注射した男が蜥蜴になって
すばやく夜の路地をすり抜けるように
聞いて血はひた走る
幽霊のように否定と肯定をコンマ一秒で繰り返し
純粋に曖昧な情熱を隅々にまで送り込んだ
息づかいが変になるのは春のせいじゃない
羽化したばかりの虫の萎んだ翅をゆっくりと押し開く
見えざる水脈のしめやかな歌声にも似て
――おめでとう! 
季節は加速しながら巻き戻される
スイッチはとろけている甘ったるい熟れた匂いをさせ
縺れた視線から赤い蝋が垂
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