其処にある指の跡/ムウ
 
小説の最後数ページ手前で
パタンと閉じて 深い深呼吸をする君
ボクはそれを馬鹿にして笑ってた

子供染みていて

もう一度 君は小説と向き合って
その馬鹿正直なその突き刺すような
眼差しにボクは撃ち抜かれた

でも愛はそこにあった

薄れた傷跡と色褪せた本だけが片隅に
開くたびに独特なでも懐かしい匂いが漂う
小説の最後数ページに残る

君の指跡

そこに指を重ねて目を閉じて
辿り着く先はいつもと同じ
何度も何度も何度も繰り返して

真っ暗なのに歪むスクリーン

小鳥が朝を出迎えていて
残り僅かなコーヒーと溢れんばかりの睡魔
拭いきれない後悔

今でもあるんだ 君への愛が色褪せずに




ボクはこの小説の結末を読めないまま
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