あのバラはなにを/ただのみきや
 
あのバラはなにを叫んで萎れたのだろう
色味を残し 姿を保ち
精気だけをすべて失ってあのバラは
果てしなく続く沈黙と引きかえになにを

あの船はなにを乗せて燃えているのだろう
水平線をゆらゆら 白い子供の帽子のよう
目隠しの手をほどいてあの船は
闇より深い光を放つ いったいなにを

なぜ皮を剥ぐのか あの人は
地図のない河を手繰るように赤く
掘り起こした遺跡の冷たさを背骨に満たし

癒されることで滅ぶ生きることで窒息する
もう生まれない
形式を纏う無風 思考しながら眠る石ころ



    
            《あのバラはなにを:2018年3月14日》








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