無題/◇レキ
お爺ちゃん
真っ昼間
海辺の無人駅に一人座った
何のために来たのかも分からないまま
海が見渡せる方の端っこの古びたベンチで昼寝をした
陽が傾いて折れたような首元に柔らかい光が当たった
見飽きた、大事に育てた花の蕾を軽やかに摘まれる夢を見た
悲しいとも思わなかった
風が少し冷たくなって
空と海の境界線に死んでゆく、鯨のような雲を見た
それは繰り返される陳腐な日常に成り下がっていると知った
雲から生まれた結晶はそれぞれの中にしか咲かないのだと知った
つまらないとも思わなかった
誰もいない
流れ星を見た
それは涙がつい、と頬に零れる速さの様だっ
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