金の林檎/ただのみきや
ことで暴かれる嘘があるのか
ひとつの愛 ひとつの美が いま腐る――
嘆き続けるカモメが海から遠い街の空を二羽
互いに独白するだけの男と女のよう
悲哀だけを滲ませて空は顔色を変えなかった
――わたしは一羽(ひとり)
太陽のように燃えて
月のように冷たい
金の林檎を探している
どこにも存在しないものだから
自分の中へ墜ちるだけ
あの日
浜に上がった死体を啄んだ
たまたまもう一羽(ひとり)
となりで啄んだだけの
そんな関係だった
ここには海の匂いはしない
苦い雨に瞳は溶けて
もうなんにも見えていない
《金の林檎:2018年3月10日》
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