空を彫る者/ただのみきや
 
木片の内には像も形もない
自(おの)ずと示す雛型も
なぞるべく引かれた線も
一つの像が彫り出された後で
木片はその内部に
一つの像となりうる可能性を秘めていたと
言えるだろうか
限りある小さな全体から
そぎ落とすことで生み出される
無限的多様性
とも錯覚しうる可能性は
木片にではなく彫刻家の中にある

ひとつの世界がある
茫漠とした
この空(うつろ)な現(うつつ)の
認識しうる限り
と言う限りの境も淡く朧な
一塊の全体がある

遥か遠い天地の間(はざま)のように縫目なく
重なり合った時間と空間も
新しい発見があっても相変わらず

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